vol.71:日本人なら知っておきたい菊の節句、重陽の節句

菊の花が最も美しく咲くとされた陰暦の9月は「菊月」と呼ばれていました。
「春は桜、秋は菊」という言葉にあるように、菊は私たち日本人にとって非常に馴染み深いものです。
今回はそんな菊にまつわるイベントについてお伝えします。

菊の節句 重陽の節句とは

菊はもともと日本のものではなく、中国から薬用として日本に伝わりました。
当時の中国には、菊のエキスが溶け込んだ水を飲んだ村人たちが百歳以上の長寿になったり、菊花酒を飲んだ子供が八百歳を数えたという伝説がありました。

それが日本に伝わり、平安初期に五節句の一つである9月9日「重陽の節句」として、菊に関する行事が宮廷に定着しました。
当時は貴重だった菊を鑑賞し、菊の花を浮かべた酒を酌み交わしながら歌を詠むことや、前日(9月8日)の夜に菊の花に綿をかぶせ、一夜明けた朝に菊露の染み込んだ綿で身を拭うといった儀式が行われました。

古来中国では、奇数はよいことを表す陽数、偶数は悪いことを示す陰数と考え、その陽数が連なる日は、めでたい反面、不吉なことが起こると考え邪気祓いをしたのが五節供の始まりです。その中でも一番大きな陽数(9)が重なる9月9日を、陽が重なると書いて「重陽の節供」と定め、不老長寿や繁栄を願うようになりました。

菊の節句のいま

「菊の節句」「重陽の節句」と聞いてもピンとこない方や知らない方も少なくありません。
今の日本では桃の節句(3月3日)、端午の節句(5月5日)、七夕の節句(7月7日)の3つはよく親しまれていて、伝統を重んじる方で七草の節句(1月7日)を行われるのではないでしょうか。

明治以前ではこれら五節句の中では「重陽の節句」が最も重要な節句として扱われてきました。しかし、明治で改暦が行われると徐々にその存在が薄まってきました。
その要因は諸説あります。

旧暦の9月9日は今の10月中ごろにあたり、まさに菊が最も美しい時期でしたが、今の9月9日は残暑も厳しく、秋らしい風流さに欠けます。
また時期的にも収穫祭が行われる時期で五穀豊穣も願うための行事でしたが、こちらも季節の時期のズレがあったから廃れたとも言われています。

菊の節句は「菊」という季節の花を多く使うので、菊がなければ儀式ができません。
また「菊酒」や「菊の鑑賞」とあるように現代の感覚として子どもが参加できる要素が少なく、他の節句に比べてオトナなお祭りだと言えます。

そういった点では賑やかな行事ではありませんが、京都で行われる重陽神事はどれもとても混み合いますので早めに訪れるのをおすすめします。

京都で行ける菊花神事/重陽神事

菊花神事 貴船神社


巫女が菊花を手に枚を奉納する。神事後の直会(なおらい)では参列者も菊酒をいただける。先着30名まで殿内参列ができます。
【基本情報】
日時:
9月9日㈪ 11:00~
アクセス:
地下鉄烏丸線「国際会館駅」→京都バス#52「国際会館駅前」→「貴船口」→京都バス#33「貴船口駅前」→「貴船」より徒歩5分

重陽神事と烏相撲 上賀茂神社


重陽神事では、本殿に菊花を供えて無病息災を祈願します。烏相撲では、ふたりの刀祢(とね)がカラスを真似る神事の後、八咫烏(やたがらす)の故事にちなむ児童の相撲が行われ、十二単姿の斎王代(さいおうだい)がその様子を鑑賞します。
【基本情報】
日時:
9月9日㈪ 10:00~
アクセス:
地下鉄 烏丸線「北山駅」より徒歩15分
市バス4系統 「上賀茂神社前」下車すぐ

重陽祭・カード感謝祭 市比賣神社


官営市場の守護所で御免状「鑑札」を発行していたことにちなみカード感謝祭が行われます。重陽祭では菊酒の接待があります。
【基本情報】
日時:
9月9日㈪ 11:00~
アクセス:
京阪「清水五条駅」より 徒歩5分
地下鉄 烏丸線「五条」より徒歩10分
市バス「河原町五条正面」 4・205・特17系統、徒歩3分

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