酒造業者が作った京阪と近鉄の段差

西側を走る京阪電車は普通に地上を走っていますが、東側を走る近鉄電車は高架線です。

この段差は伏見という場所の特徴によって生じたものです。

現在の近鉄京都線は奈良電気鉄道によって1928年に開業しました。

奈良電気鉄道は京阪と同じように地平に線路を敷く計画でしたが、陸軍からは十六師団の施設が見えることを、京都府からは桃山御陵につながる参道と平面で交差することなどが難点であると指摘され、この区間を地下で建設することとなりました。

しかし、地下には桃山丘陵からの地下水脈が流れており、これを分断すると生活用水である井戸水や酒造業者が使う水が枯れてしまいます。

そこで、酒造業者の働きかけによって、京都市内初の高架線で建設されました。京阪電車は、陸軍や御陵の建設前に開通していたので問題はなかったのです。

ちなみに、鉄道の開業が御陵の建設の前か、後かという時期の違いが京阪は「伏見桃山」、近鉄は「桃山御陵前」という駅名に表れています。

平成29年12月18日 語り部:井上 学